星に願いを - 「The Economist / July 11th 2009」
先週号のエコノミスト誌では、スペシャルレポートとして米テキサス州の話題が取り挙げられていました。
アメリカでも最も急成長を遂げている州であり、その位置からも(移民等の面から)貧富の差が著しく、西部と南部で乖離がある州であり、メキシコとの関係や歴史的経緯から複雑な文化を持っている州であり、しかし一方で、税制や少ない規制の面から様々な企業がその本拠とする州であることなど、初めて知りました。
*「ひとつ星、昇る テキサス特集」
「Lone Star rising – A special report on Texas」(economist.com)
タイトルにある「Lone Star」は、白い星をひとつあしらってあるテキサスの州旗に因んでいるもので、テキサスのことを指してよく使われるそうです。州旗というものの存在も初めて知りましたよ。
(テキサス州政府のサイトより抜粋)
テキサスと言えば額に米のあの人しか思い浮かばない私は無知にも程があるのでちょっと遠くを見たりしますが、そういえば彼の両肩には星が付いてましたねぇ。剥がして投げたりしてましたけど。
今回の特集では様々な観点でテキサスの現在を語っていますが、特に印象に残ったのは教育の問題についてです。記事の中で、テキサスの成功者のひとりであるRed McCombs氏は以下のように語っています。
(彼はテキサスで成功し、巨富を築いた。)
しかし、彼はテキサスの教育システムの貧相さについて失望を隠さない。「我々の州の大きな癌は」彼は怒鳴って言う。「我々の高校からの酷い卒業率さ。恥ずべきことだ!30年に渡ってそうだし、より悪くなってきている。我々が強欲で、無礼で、不注意だって?きっと全部そのせいさ。」But he gets distinctly emotional about the poor performance of Texas’s educational system. “The biggest blight on our state”, he thunders, “is the terrible graduation rate from our high schools. Shame on us! It’s been that way for 30 years, and it’s getting worse. Have we been greedy, ignorant, uncaring? Maybe all of those things.”
(特集内Tex-Mix(P.6)、Learning difficultiesより引用)
テキサスは税収や銃、車両事故など様々な問題を抱えているそうですが、それらを突き詰めると教育の不備が大きな原因のひとつとなっていると言います。
そんな中、テキサスのヒューストンでは、アメリカ全体の学力向上に向けた試みの一環として、新たな学校組織が導入されているそうです。
*「頑張れば、報われる - 最貧層の子供たちへの教育の新たな試み
「Work hard. Be nice – A new breed of school for some of the poorest kids」(economist.com)
これはKIPP(Knowledge Is Power Programme)と呼ばれるもので、州がお金を出すことで、いかなる生徒にも無料で提供される学校です。興味深いのは、KIPPでは大学へ進学することに全力を尽くすため、生徒に徹底的なハードワークを課すということです。
その結果、実際に優秀な学生が多数誕生しつつあり、教育の不備に基づく社会の様々な問題を解消することに繋がるとして、期待されているのですね。
日本でも一時期「ゆとり教育」というKIPPの真逆な教育制度が導入されたりして、大きな学力低下を招いたと言われています。
「ゆとり」という言葉自体にマイナスのイメージを植え付けてしまったこの施策の結果が、私たちの社会にどのように影響してくるかは、今後どんどん明確になってくるでしょう。
一度はテキサスのような状態にならないと、残念ながら差し迫った問題意識は持てないものなのかもしれません。銃は嫌ですけど(怖いから)。
教育面だけでなく、本記事ではテキサスの様々なトピックを取り挙げています。
その歴史的・地理的な理由から、様々な人種が同居するアメリカにおいてもテキサスは特殊な州であり、ますます色々な文化や歴史と向き合わなければならない現代のアメリカや私たちにとって、将来を見越すための土地なのだと言えます。
そういった意味では、テキサスはアメリカの将来を占う希望の星なのかもしれませんね。
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