広がりの広がり - 「The Economist / June 20th 2009」
私は私生活でも仕事でも、結構Webを使っている方だと思います。Web依存症とまでは言いませんが、もしインターネットやWebが使えなくなったら、途方に暮れてしまうタイプの人間であることは間違いありません。
先週号のThe Economistには結構日本の話題も載っていましたが、特に興味を覚えたのはインターネットやWeb技術に関する話で、「East Africa gets broadband – It may make life easier and cheaper(P.46)」と「A web of sound – Talk about that(P.76)」でした。
両方ともWebで読むことができますね。これだから止められないWeb(←依存症)。
*東アフリカにやっとブロードバンドが来た話
East Africa gets broadband – It may make life easier and cheaper
*耳で聞き、話して作るWebの話
A web of sound – Talk about that
東アフリカにブロードバンド
東アフリカの数カ国は高速インターネット回線が繋がっていないほぼ唯一の地域で、衛星回線による低速通信しか使えず、しかも高額だったそうです。
そこでそのような格差を解消すべく、ケニヤが中心となって光ファイバ回線の敷設に着手したそうです。
これによって、ブルンジ、ルワンダ、タンザニア、ウガンダが、そしてソマリア、エチオピア、スーダンの一部が高速インターネットの世界に繋がることになるようです。
多大な回線敷設費用は殆どケニアの出資になるようですが、ケニア大統領であるムワイ・キバキ氏は、国にインターネットの恩恵をもたらすために決断したようです。
以降の回線利用やビジネス展開に関するアドバンテージのことも当然視野に入れた判断だと思いますが、素晴らしい。
東アフリカはタイムゾーンが西欧諸国と少ししか違わないので、インターネット回線が繋がることによって、バックオフィス業務のアウトソーシング先として有望視されているようで、インドやスリランカとの競合になると目されているようです。
こういった経済的なメリットだけでなく、インターネットを通じて情報共有が広がることで、一部エリートによる支配的な構造を脱して、政治的な情報格差も解消されるかもしれないと記事では期待を語っています。
経済的・政治的に問わず、支配層からすれば情報を統制した方が色々とやり易くなるものです。ルワンダ虐殺の前提として、支配側にとって都合の良い情報を流布して民族の対立感情が醸成されたことを忘れてはいけないでしょう。
そういった観点からも、こうした情報を得て共有する手段が安く広く使われるようになるのは(私たちの生活を見ても)望ましいことだと言えます。東アフリカでも日本と同様に、増えた情報をしっかり受け止め、自分で判断していくリテラシが求められるようになっていくのだと思います。
それはともかく、記事にちらりと書いてありましたが、ブロードバンド用の光ファイバを守るために槍を持ったマサイの人たちを雇うというアイディアは素晴らしすぎます。
耳で聞き、話して作るWeb
もうひとつインターネットに関連したトピックで、インドIBM研究所のGuruduth Banavar氏が中心となって考案された「voice extensible markup language」の話が取り上げられていました。
これはW3Cによって策定が進められている「VoiceXML」と呼ばれるXMLフォーマットのひとつで、音声でコンテンツをデリバリするための仕様です。Webと電話との垣根を取り払うといった展望を持っているようですね。
「VoiceXML」は今年1月にバージョン3のワーキングドラフト2版が出されたようですが、私は今まであまり興味を持っておらず、情報を見たことがなかったのです。
今回記事を読んでみて興味深かったのが、コンテンツをデリバリするだけでなく、ユーザがコンテンツ内容を「話す」ことで録音され、コンテンツを作成していくことができる、というものです。
これによって、文字や視覚に関するハンディキャップを持つ人たちも、キーボードやマウスを使った不向きなオペレーションを強いられること無く、自分の音声サイトを作ることができるようになるということですね。
この技術によって、現在のWebのあり方が直ちに目が見えない/字が読めない人に優しくなるとは思いませんが、少なくとも彼らの主催する掲示板やWiki、Blog、SNSなどが、同じ境遇の人たちにとって使い易いものになる可能性が高まったのではないでしょうか。
そうなれば、コミュニティの活動を通して、情報共有や新しい生活への選択肢が広がることに繋がります。
コールセンターや音声ガイドを、音声アプリケーションによってある程度自動化することが期待される「VoiceXML」ですが、やはり字が読めない、目が見えない人の情報格差を解消するための手段としても、活用を期待したいところです。
もうひとつ面白いと思ったのは、広告についてです。電話でコンテンツをやり取りした場合、発話者に通話料が掛かってしまいますが、音声サイトのオーナになって広告を展開すれば、その支払いが賄われる可能性がある、というのですね。
というのも、目で見る広告は事前にポップアップをブロックしたりできますが、音声は完全にシーケンシャルですから、聞いてみるまで広告をブロックできないのですね。したがって、大きな広告収入が見込めるのではないかと言われています。
まあ、もし「VoiceXML」が普及した時には、何か回避策が出されているような気もしますが…。
今回の記事では、インターネット利用についての地域的な広がりとユーザセグメントの広がりに関する取り組みを垣間見ることができました。普段あまり興味を持っていない領域についても、時々チェックしてみるものですね。
そのためにもWebは捨てられんなー(←依存症)。
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