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自己啓発は逆効果? - 「The Economist / June 13th 2009」

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「やればできる!」「あなたに眠っている本当の能力を活かせ!」系の自己啓発本がベストセラーになるようになって結構経ちます。

私もご多分に漏れず、「自己信頼」とか読んでみたりしていますが、先週のThe Economist誌の「Science&Technology」セクションに、ちょっと面白い記事が載っていました。以下でオンラインでも読めます。

*ポジティブシンキングがもたらすネガティブな結果
Positive thinking’s negative results (Economist.com)

私たちは、前向きに考えることは良いことだと考えるものですが、どうやらそういう考え方がよりヒドい結末を引き起こすこともあるらしい。…なんとなくオチが読めるような気にもなってきますけど(笑)。

上記の記事で報告されている研究は、次のような段取りで行われたそうです。

  1. 68人の男女それぞれに対して、既に定評のある方法を使って自己評価の程度(高い/低い)を測定しておく
  2. 彼らに4分間で自身の考えや感じていることを書き下してもらう。
    その際、ランダムに選出された半数の人たちには「私には愛される資格があるわ」的なポジティブな自己暗示に類する文言をベルが鳴らされる度に書いてもらう
  3. 作業後すぐ、彼らに「30代になって素敵な恋愛ができる見込みはあると思う?」的な質問を幾つかしてみて、感情を測定してみる

感情の測定は、0〜35までの点数で測定出来る手法を使って測定したそうで、高い点数ほど好感情であるそうです。で、その結果が以下のようになった模様。

項番 対象の属性 事前の行動 平均感情値
1 自己評価が高い ポジティブな自己暗示 31
2 自己暗示無し 25
3 自己評価が低い ポジティブな自己暗示 10
4 自己暗示無し 17

1行目と3行目を比較した結果として、自己評価が元々低い人にポジティブな自己暗示を掛けようとしても、自分自身の認識とあまりにかけ離れているせいで、却ってネガティブな評価を強化してしまう、というのですね。

確かに以前から、精神的に弱っている人に対して「頑張れ」は禁句だと言われてましたし、納得出来る話です。
ヒューリスティックな話を、科学的な根拠を持って説明しようという試みという感じでしょうか。

こういう自己評価が低い人にはどういう言葉が効果的なんでしょうかね。あえて冷たく言って奮起を期待するとか…。
「私なんて…」
「そうだねー、成績は悪いし彼氏にはフラれるしダメだねーホントダメだねー」
「なんだと貴様このこのこのこのこの
こういう人には元々ケアは要らないような気もするし。

この研究全体でどのような実験をしているかは分からないのですが、記事になった実験だけが根拠だとすると、ちょっと母集団の数が68人というのは少なすぎるという印象があります。

前提となる自己評価や感情測定の信頼性も不明ですし、その感情値が、人間の振る舞いとどのように関連するのかもよく判らないので、「ヒドい結果になる可能性がある」としかまだ言えないのでしょうね。

自己啓発も含めた心理的なケアは、もちろん個々人の状態に合わせて(あえて冷たくという選択肢も含めて)適切な内容で行うのが理想的なのでしょうけれど、それを本でやろうとすると無限の前提に対応した無限のバリエーションが必要で、事実上は不可能です(それはそれで無限の需要になって良いのかしら…)。

こういった研究が進めば、例えば自分の精神状態を正確に測定した結果から、最適な励ましの言葉が得られるようなシステムができるようになるかもしれませんね。

fujisan.co.jpへ
英国Economist誌(Fujisan.co.jp)

Written by nen

June 20th, 2009 at 11:12 P

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