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ビッグブラザーはコンピュータ? - 「その数学が戦略を決める」

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全ての人民が偉大なコンピュータによって制御され、人の意思がその価値を失った未来。そんなSFは幾つもありますが、いつまでもお伽噺として笑ってはいられない。そんな気にさせられるのが、本書「その数学が戦略を決める」です。

その数学が戦略を決める

コンピュータの処理速度の進歩と、それに伴う処理データ量の飛躍的な拡大によって、現代では超大量データに対する統計計算が当たり前に行えるようになりました。
特に、回帰分析に代表されるような、事象の原因と結果の相関を見つける分析を超大量データに基づいて実行することによって、私たちの行動がどのような嗜好や傾向に基づいたものであるか、簡単に判ってしまうようになりました。
本書では、そのような超大量データに基づく統計分析を「絶対計算」と名付け、どのように活用されているのか、様々な事例を以て説明しています。
最近では、Amazonに代表されるようにリコメンデーションエンジンを備えているWebショッピングサイトが多くなりましたね。もうAmazonからのお勧め商品をホイホイ買ってしまって幾ら注ぎ込んだことか…(望遠)。買っても買っても減らないんだもんなー…というのは全く逆効果。
こういったエンジンでは基本的に、顧客の購買履歴から購買傾向を抽出し、それに基づいたセグメントを設定して、対象の顧客とセグメントとの適合具合から、お勧めする商品をマッチングしています。
ここでは簡単に「購買傾向」とか言ってますが、「マイクロトレンド」が述べている通り、情報化が進んだ現代における「購買傾向」なんてそれこそ千差万別、あらゆるセグメントが設定されてもおかしくない筈です。
つまり、無数に存在する顧客の嗜好があり、それを分析して抽出して得られる無数の購買傾向がある、しかし何よりもそれらを収集して計算する情報処理の能力によって、「絶対計算」が実現されているのですね。
絶対計算の存在によって、過去のデータに根拠付けられた結論が得られるようになり、所謂専門家の経験や勘による意思決定の価値が相対的に下がりつつある現状を、本書では様々なケースで示しています。
特に、医療の分野でも、EBM(Evidence Based Medicine:根拠に基づく医療)と呼ばれる、世界中の症状データベースに基づく医療内容の決定手法が導入されつつあり、これによって医療の成功率が高まることは、私たちにとって良いニュースでしょう。
「経済は感情で動く」「リスクにあなたは騙される」等で述べているように、人間の判断には様々な錯誤が働く上、それを裏付ける根拠が見えないことも多いです。
医師だってやはり人間ですから、偏見や見逃しによる誤診だってあり得ます。しかも日常業務で多忙を極めていて、最新の研究に基づく治療方法を学習することは難しいでしょう。
コンピュータは常に最新のデータを収集できるし、正しいデータからはいつでも妥当な結果を弾き出すのです。
とはいえ一方で、(これは本書の記述にはありませんが)統計のみに判断の根拠を置くことに対する批判も当然あります。EBMによって統計に基づいた医療内容のリコメンデーションが行われたとしても、それが「その」患者にとって本当に意味があるものなのかは、やはり確実ではないのですから。
治療が失敗して亡くなった患者に、「100人のうち90人は助かったんだけど、残念ながらあなたは残り10人の人になりました」なんて言っても何の慰めにもなりませんね。
こういう話になると、その医者を信頼するかどうか、という領域にまで踏み込まざるを得なくなってきます。
人の判断の価値はどこに残るのか、絶対計算を上手く利用していくために、私たちは何をしなければならないのか。
本書では、絶対計算を行うためにどのようなデータをコンピュータに食わせるのか、その目的は何かを考えるのは、あくまで人間であると言います。
また、絶対計算によって世界中の意思決定がサポートされつつある現代では、あらゆる意思決定の結果に対して、それが正しいのか、自分にとって本当に価値があるものなのかを考えなければ、絶対計算を利用する立場の人間に、いいように利用されるだけだと警鐘を鳴らします。
これは、「リスクにあなたは騙される」が述べているのと同じように、「頭」を使ってよく考えることに人間の価値があるのだということでしょう。
Amazonでお勧めされた商品を何も考えずにホイホイ買ってしまう人間は、飛んで火に入る葱背負った鴨レベルで危険だということですね。
標準偏差を使った考え方や、ベイズ推定に基づく複数の確率を扱う考え方など、絶対計算に負けないための簡単なプラクティスもちょっと述べられているので、自分でもやってみようという気にして貰えます。
確率・統計が苦手、という方(私のことだよ)にもお勧めです。

コンピュータの処理速度の進歩と、それに伴う処理データ量の飛躍的な拡大によって、現代では超大量データに対する統計計算が当たり前に行えるようになりました。

特に、回帰分析に代表されるような、事象の原因と結果の相関を見つける分析を超大量データに基づいて実行することによって、私たちの行動がどのような嗜好や傾向に基づいたものであるか、簡単に判ってしまうようになりました。
本書では、そのような超大量データに基づく統計分析を「絶対計算」と名付け、どのように活用されているのか、様々な事例を以て説明しています。

最近では、Amazonに代表されるようにリコメンデーションエンジンを備えているWebショッピングサイトが多くなりましたね。もうAmazonからのお勧め商品をホイホイ購入して幾ら注ぎ込んだことか…(望遠)。

こういったエンジンでは基本的に、顧客の購買履歴から購買傾向を抽出し、それに基づいたセグメントを設定して、対象の顧客とセグメントとの適合具合から、お勧めする商品をマッチングしています。
ここでは簡単に「購買傾向」とか言ってますが、「マイクロトレンド」が述べている通り、情報化が進んだ現代における「購買傾向」なんてそれこそ千差万別、あらゆるセグメントが設定されてもおかしくない筈です。

つまり、無数に存在する顧客の嗜好があり、それを分析して抽出して得られる無数の購買傾向がある、しかし何よりもそれらを収集して計算する情報処理の能力によって、絶対計算が実現されているのですね。

絶対計算の存在によって、過去のデータに根拠付けられた結論が得られるようになり、所謂専門家の経験や勘による意思決定の価値が相対的に下がりつつある現状を、本書では様々なケースで示しています。
特に、医療の分野でも、EBM(Evidence Based Medicine:根拠に基づく医療)のひとつとして、世界中の症状データベースに基づく医療内容の決定手法が導入されつつあり、これによって医療の成功率が高まることは、私たちにとって良いニュースでしょう。

経済は感情で動く」「リスクにあなたは騙される」等で述べているように、人間の判断には様々な錯誤が働く上、それを裏付ける根拠が見えないことも多いです。
医師だってやはり人間ですから、偏見や見逃しによる誤診だってあり得ます。しかも日常業務で多忙を極めていて、最新の研究に基づく治療方法を学習することは難しいでしょう。
それに対して、コンピュータは常に最新のデータを収集できるし、正しいデータからはいつでも妥当な結果を弾き出すのです。

とはいえ一方で、(これは本書の記述にはありませんが)統計のみに判断の根拠を置くことに対する批判も当然あります。EBMによって統計に基づいた医療内容のリコメンデーションが行われたとしても、それが「その」患者にとって本当に意味があるものなのかは、やはり確実ではないのですから。
治療が失敗して亡くなった患者に、「100人のうち90人は助かるんだけど、残念ながらあなたは残り10人の人になりました」なんて言っても何の慰めにもなりませんね。

こういう話になると、その医師を信頼するかどうかという領域にまで踏み込まざるを得なくなってきます。これはまさに、人間対人間の問題になるのでしょう。

人の判断の価値はどこに残るのか、絶対計算を上手く利用していくために、私たちは何をしなければならないのか。本書では、絶対計算を行うためにどのようなデータをコンピュータに食わせるのか、その目的は何かを考えるのは、あくまで人間であると言います。
また、絶対計算によって世界中の意思決定がサポートされつつある現代では、あらゆる意思決定の結果に対して、それが正しいのか、自分にとって本当に価値があるものなのかを考えなければ、絶対計算を利用する立場の人間に、いいように利用されるだけだと警鐘を鳴らします。

これは、「リスクにあなたは騙される」が述べているのと同じように、「頭」を使ってよく考えることに人間の価値があるのだということでしょう。つまり、Amazonでお勧めされた商品を何も考えずにホイホイ買ってしまう人間は、飛んで火に入る葱背負った鴨レベルで危険だということですね。

標準偏差を使った考え方や、ベイズ推定に基づいて事前・事後の複数の確率を扱う考え方など、絶対計算に負けないための簡単なプラクティスもちょっと述べられているので、自分でもやってみようという気にして貰えます。
確率・統計が苦手、という方(私のことだよ)にもお勧めです。

Written by nen

June 15th, 2009 at 10:00 P

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